国債発行について、主に政府事業の実施と国民への給付金の直接給付の仕分けを通じて、表題について考察する。
1 政府事業実施
政府が国債を発行し、その売却で得た資金(日銀政府預金)で、政府事業を実施し、実施会社へ代金を支払うことになるが、このプロセスごとの仕分け(簡易B/S)を表1に示す。
表1 国債で政府事業を実施した場合の仕分け(簡易B/S)
プロセス | 組織 | 借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|---|---|
国債発行民間銀行購入 | 政府 | 日銀政府預金 | 100 | 国債 | 100 |
民間銀行 | 国債 | 100 | 日銀当座預金 | 100 | |
政府事業実施 実施会社へ支払 |
政府 | 事業成果取得 | 100 | 日銀政府預金 | 100 |
民間銀行 | 日銀当座預金 | 100 | 預金 | 100 | |
事業実施会社 | 預金 | 100 | 売上 | 100 |
この結果を組織ごとに整理すると、表2となる。
整理とは、組織ごとに、借方・貸方で同じ項目があった場合には、プラス・マイナス=ゼロ として消去すること。
表2 組織ごとに、借方・貸方で同じ項目を消去整理した簡易B/S
組織 | 借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|---|
政府 | 事業成果取得 | 100 | 国債 | 100 |
民間銀行 | 国債 | 100 | 預金 | 100 |
事業実施会社 | 預金 | 100 | 売上 | 100 |
表2は、政府発行の国債という負債が、
- 政府は政府が実施した事業の成果を取得する
- 事業実施会社は自社の預金を獲得する
という政府・民間それぞれの資産に変換されたことを示している。
2 国民への給付金直接支給
政府が国債を発行し、その売却で得た資金(日銀政府預金)を、国民に直接給付する場合のプロセスごとの仕分け(簡易B/S)を表3に示す。
表3 国債で国民へ直接給付する場合の仕分け(簡易B/S)
プロセス | 組織 | 借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|---|---|
国債発行 民間銀行購入 |
政府 | 日銀政府預金 | 100 | 国債 | 100 |
民間銀行 | 国債 | 100 | 日銀当座預金 | 100 | |
政府から国民へ 直接給付 |
政府 | 国民への 直接給付 |
100 | 日銀政府預金 | 100 |
民間銀行 | 日銀当座預金 | 100 | 国民の預金 | 100 | |
国民 | 国民の預金 | 100 | – | – |
この結果を組織ごとに整理すると、表4となる。
整理とは、組織ごとに、借方・貸方で同じ項目があった場合には、プラス・マイナス=ゼロ として消去すること。
表4 組織ごとに、借方・貸方で同じ項目を消去整理した簡易B/S
組織 | 借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|---|
政府 | 国民への 直接給付 |
100 | 国債 | 100 |
民間銀行 | 国債 | 100 | 預金 | 100 |
国民 | 国民の預金 | 100 | – | – |
表4は、政府発行の国債という負債が、
- 政府の国民への直接給付事業の実施を実現する
- 国民は自分の預金を獲得する
という政府・国民それぞれの事業・資産に変換されたことを示している。
国債発行の歴史は、国富形成の履歴である