これは、最近のある新聞社の社説である。
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この社説は、現在の我が国マスメディアの標準的レベルの内容といえる。
まず、最近の ① ドル円相場が、③ 151円と円安が一段と加速している現状から、② 日本経済の弱さが出てきている、と指摘している。
この円安に対して、④ 財務省の為替介入も一時的なもので効果はないだろう、として、さらに黒田日銀の進めてきた ⑤ 大規模金融緩和策も結果として、日本経済の競争力低下を来した、としている。
こうして、すべて、ダメダメムードで来て、最後に、結論として、いや、結論ではなく、路頭に迷うが如く、⑥ どう脱却していくか、市場の動向を注視するだけでなく、長期的な視点が欠かせない、と、わけのわからないことで、お茶を濁してごまかそうとしている姿がありありと浮かぶ。
マスメディアの経済関係記事のベースは、財務省からの『お達し』なので、このわけのわからない結論は、財務省のレベルでもある。
みなさんは、どのように思われるだろうか。
この社説の中で、何が問題だと思われるか。
⑤の部分が、おかしい。
『延々と続けてきた大規模金融緩和策の下で進んだ日本経済全体の競争力低下』という認識が、おかしい。『よかれと思って、実施してきた大規模緩和策の結果、なぜ、競争力が低下したのか』という問題意識が、まったくない。
黒田日銀が、精魂込めて実施してきた大規模金融緩和策の結果、どうなってきているのか、の現状認識が、まったくない。
大規模金融緩和の結果、膨大な貨幣があるところに眠ったままになっており、一銭も市場に出ていない。膨大な金が、死に金となっており、日本経済再生の一助にもなっていないため、日本経済は弱体化の一途をたどってきた、ということなのだが、この面には、一切目が行っていない、ということが、根本原因だ。
どこに眠っているかといえば、日本銀行の中に眠っている。その口座は、日本銀行当座預金だ。黒田さんが、『異次元金融緩和』と称して、民間金融機関の国債を買いまくった結果、膨大なお金が、日本銀行内に眠っており、市場に出回っていない。
この資金を市場に出すには、政府が財政出動をかけるだけで、簡単に市場に出ることになるわけだが、これを許せば、資金が潤沢にあることが世間に知れ渡るため、財政逼迫を理由とした消費税増税などの増税路線をとることが出来なくなるために、財務省は、これを拒否している。このため膨大な資金が日本経済のために使われることなく、日銀内に眠っているだけ、ということになっている。
膨大な額のお金が眠っていると言ったが、日銀の統計資料を整理したものが、日銀当座預金を含めたマネタリーベースの推移に示されている。
なんと、545兆円もの大金が日本銀行内に眠っているのだ。
ところが、この社説にあるとおり、我が国の新聞・テレビなどのメディアは、気が付いていないのか、財務省からのお達しのためか、一切この事実には、触れずじまいになっている。
この日本銀行内の資金を使えば、国民一人当たり、年間40万円づつ10年間、給付可能なのだ。4人家族だったら160万円/年だ。
まずは、この膨大な日銀当座預金の門戸開放が最重要課題となるわけだが、この標準的な社説には、一切書かれていない。
主要メディアの問題点が、おわかりいただけたかと思う次第である。