静岡の住民グループ「原発県民投票静岡」が出した
浜岡原発の再稼動に関する県民投票条例案について、
静岡県議会は、明日(2012/10/11)難癖をつけて否決
しようとしている。
県民投票条例の制定を求める直接請求で、17万8240人分の
署名が集まった。法定数(県内有権者数の50分の1以上)を10万
余りも上回るものだった。
住民団体側は「住民投票実現が目的なので、修正してほしい」とし、
その後、投票資格者を20歳以上にするなどの修正案を提示した。
【難癖】
① 法制上の問題点があり、(このままでは)執行できない。
たとえば、投票の期日が「6ヵ月以内」となっている点について、
「非現実的」と一蹴し、投票有資格者を「18歳以上」としている点も
「18歳以上の名簿の作成に時間とコストがかかる」などと、
条例案の不備を強調。
② 川勝知事も記者会見で「修正するなら公開の場で釈明し、
署名者に説明する必要がある」とまで語った。
【住民の声】
「これでは直接請求権は実質的に使えない。自分たちの意思を
表明することが、なぜ、できないのか。もどかしさを感じる」
【難癖の裏にひそむ真の思惑】
DIAMOND ONLINE(下記再掲)による分析はこうだ。
住民団体が作った条例案への批判の裏には、別の要素が潜んでいる
のではないか。県民投票の実施に絶対反対という人たちの思惑だ。
おそらく、彼らはもし県民投票が実施されたら、「再稼働反対」に
○が集中すると危惧しているのであろう。
だからと言って、県民投票実施に真正面から異議を唱えると批判を浴びる。
それで、条例案の細部の問題を格好の口実にして、実施を阻止しようと
動いたのではないだろうか。
【明日の県議会採決に注目】
10月11日(木)の県議会本会議で、住民投票条例採決、
住民投票可否の議決だ。
目を凝らし、耳を澄ませて結果を見とどけるため、ぜひ傍聴に参加を!
また、全国の皆さんもぜひご注目を!
DIAMOND ONLINE
相川俊英の地方自治“腰砕け”通信記 (再掲)
【第54回】 2012年10月10日
県の“ダメ出し攻撃”に晒された県民投票条例案
浜岡原発の再稼働をめぐる静岡の攻防戦
1 「これでは意思表明などできやしない」浜岡原発再稼働の是非を
問う住民の焦り
「これでは直接請求権は実質的に使えない。自分たちの意思を
表明することが、なぜ、できないのか。もどかしさを感じる」
静岡の住民グループ「原発県民投票静岡」の鈴木望・共同代表が、
悲憤慷慨する。そして、「我々は第1条と第2条さえ実現されればよいので、
修正してほしいと言っているのですが……」と、嘆く。
確かに、執拗に難癖をつけられているような感が拭えない。
鈴木さんたちは、こんな紆余曲折を辿っていた。
静岡県内でこの夏、浜岡原発の再稼働を県民投票で問おうという
署名活動が展開された。活動を行なったのは、鈴木さんらの住民
グループである。
県民投票条例の制定を求める直接請求で、16万5127人分の署名が
集まった。法定数(県内有権者数の50分の1以上)を10万余りも上回る
ものだった。これにより、住民グループが作成した条例案は、県知事の
意見を添付したうえで、県議会に提出されることになった。
条例制定の直接請求は、住民に対し議会への提案権を認めたもの
にすぎず、条例案を成立させるか否かの最終決定権は議会にある。
「議会が我々の意見に耳を傾けないので、直接請求によって民意を
反映させよう」と語る人がよくいるが、直接請求された条例案の生殺与奪を
握っているのも、議会である。
静岡県の川勝平太知事は、当初「直接民主主義はまだ地について
いない」と述べ、県民投票の実施に否定的だった。
ところが、8月27日に住民グループが県に条例制定請求書を提出すると、
条例制定に賛成する意向を表明した。
「16万人以上の署名は非常に大きく、尊重したい。県民が住民投票条例を
求めているなら、それを尊重するのが民主主義だ」とまで語った。
鈴木さんはこの発言を知り、思わず「君子豹変す」との言葉を発した。
直接請求された条例案を審議するのは、議会である。可決するのも
否決するのも、そして修正するのも議会の判断に委ねられている。
それが今の仕組みだ。
2 直接請求された条例案が暗礁に細かい不備をあげつらう静岡県
直接請求された条例案が審議される静岡県議会9月定例会は、
9月19日の開会。その19日前の8月31日、静岡県の幹部が記者会見し、
住民団体が作った条例案に「法制上の問題点があり、(このままでは)執行
できない」と、強烈なダメ出しをした。
たとえば、投票の期日が「6ヵ月以内」となっている点について、
「非現実的」と一蹴し、投票有資格者を「18歳以上」としている点も
「18歳以上の名簿の作成に時間とコストがかかる」などと、条例案の不備を
強調した。
静岡県からの強いダメ出しを受け、住民団体側は「住民投票実現が
目的なので、修正してほしい」とし、その後、投票資格者を20歳以上に
するなどの修正案も提示した。条例案の第1条(再稼働の是非に関し、
県民の意思を明らかにするとの目的)と第2条(県民投票を行なう)が根幹で、
それ以外の部分の修正は本質ではないからだ。
しかし、住民団体に厳しい声が寄せられた。「条例案は不備だらけ」と、
攻撃されるようになった。
川勝知事も記者会見で「修正するなら公開の場で釈明し、署名者に
説明する必要がある」とまで語った。
果たして、どうだろうか。住民が直接請求する条例案に完全無欠を
求めるべきなのか。
3 否決後に有志議員が修正案を提出、住民の声は今度こそ県議会に
届くのか?
住民団体が作った条例案への批判の裏には、別の要素が潜んでいる
のではないか。県民投票の実施に絶対反対という人たちの思惑だ。
おそらく、彼らはもし県民投票が実施されたら、「再稼働反対」に○が
集中すると危惧しているのであろう。だからと言って、県民投票実施に
真正面から異議を唱えると批判を浴びる。
それで、条例案の細部の問題を格好の口実にして、実施を阻止しようと
動いたのではないだろうか。
静岡県議会9月定例会が開会し、条例案は川勝知事の
「県民投票が適正かつ円滑に実施できる方向で議論賜りたい」との意見付きで
提案された。総務委員会で審議となったが、県民の意思を問うべきかという
本質的な議論よりも、条例案の細部についての反対論が中心となった。
そして、原案は全会一致で否決された。10月5日のことだ。
これにより、浜岡原発の再稼働の是非について、県民が意思を表明する
機会を断たれたかと思われた。ところが、最終日(10月11日)に超党派の
有志議員が条例の修正案を提出する運びとなった。
原案に対する反対理由となった「投票期日」や「投票資格」などを全て
修正したものだ。
不備を理由に原案を退けた議員たちがどう出るか、賛否の結果が注目される。