国債発行とは、どういうことか?(改定1版-2023/12/17)




政府が国債を発行して、その売却資金で事業を実施する、いわゆる財政出動による政府事業を実施するときのプロセスは
概観すると、大きく次の2つに分けてみることができます。

1 国債を発行して、民間銀行に売却する
2 そこで得た資金で政府が政府事業を実施する

となります。
このプロセスの中で、まず問題になるのは、1項で、民間銀行が国債を買う時の購入資金は、何なのか?ということです。
その資金の出所として、主に次の2つが、論争の的となります。

1 民間銀行が預かっている国民の預貯金を使う
2 民間銀行が日本銀行の通貨発行権(信用創造)により発行される資金を借りる

一般に多くある誤解は、1項が正解、というものですが、実は、2項が正解なのです。
その理由を簡単に言えば、1項の預貯金は、預金者にとっては、資産ですが、銀行にとっては、
国民から預かった負債なのです。負債で資産を買うことはできないので、民間銀行にとって資産となる国債を
負債である預貯金で買うことは出来ないからです。
また、私たちが、民間銀行からお金を借りるときに、民間銀行は、負債を貸し出して、貸付金として資産計上することは
できないので、預貯金から貸し出すことはできません。銀行は、担保をしっかり押さえてから、信用創造で、資金を作り
出して、これを、私たちの預金通帳に記入しています。ですから、民間銀行は、原理的には、自分の銀行が持っている
預貯金額の大小に関係なく、信用さえあれば、いくらでも貸し出すことができるわけです。
日本銀行が民間銀行へお金を貸し出すときには、これと同じことを、日本銀行が行っているわけなので、正解は、2項と
なります。
具体的には、日本銀行金融研究所のホームページにあります『日本銀行の機能と業務』の
『第4章決済と日本銀行の役割』</a >のP.82の前段、

 『その後,2001 年には国債決済の RTGS 化を行い,その際には,国債のDVP
決済の 円滑化のために,国債 DVP 同時担保受払機能(ITC 機能)を導入した。
同機能は,国債の買い手である金融機関が,売り手から受け取る国債を担保に日本銀行から日中
当座貸越を受け,同時にその資金を当該国債の買入代金の支払いにあてることができる仕組みで,
流動性の節約に有効であることから広く用いられている。』

を、ご参照ください。 これは、簡単に言えば、

『民間銀行が国債を購入する場合に、日本銀行がその購入資金を国債を担保に民間銀行に貸付ける、
すなわち、当該民間銀行の日銀当座預金に資金を供給することができる、ということで、日銀による国債を
担保とした信用創造による民間銀行への資金供給により、民間銀行は、国債を購入している』

ということです。
民間銀行は、国債購入時に日本銀行から借金をするわけですが、このお金は、政府に入ります。政府は、そのお金で、
民間業者に事業を依頼し、事業が完了した暁には、民間業者に、代金(政府発行の小切手)として支払います。
民間業者は、政府小切手を民間銀行へ持ち込み、民間銀行は、その政府小切手で、日本銀行内の政府預金からの民間銀行の
当座預金(日銀当座預金)へ、政府小切手の金額を移動させるとともに、民間業者の預金額をその額だけ増やすことに
なります。
以上を、まとめると、政府が国債を発行して、民間銀行に売って、その資金で事業を実施すれば、

1 民間銀行には、その金額が還流されて戻ってくるので、国債購入資金の枯渇に困ることはない
2 民間業者には、預金という資産が増えるので、リッチになる
3 政府にとっては、国債という負債は、増えるが、同時に数々の事業を実施できることになり、
我が国のGDPを大きく伸ばすことができ、日本がリッチになる

ということで、国債発行による事業の実施は、政府・民間にとって、一挙両得の施策と言えるわけです。
国債残高の増加記録は、日本のGDPを成長させた根拠となる指標なので、まったく心配する必要はなく、逆に大きくして、
日本のGDP成長に貢献させなければならない指標であるわけです。
よく心配されている、国債を購入しすぎると、民間家計貯蓄を圧迫して、国民生活に重大な影響をもたらす、という財務省等の
喧伝による嘘が長年にわたって流されたため、日本は、貧乏国になり下がってしまったわけです。
この一挙両得の施策のプロセスを、次の具体例と会計の仕分け原則を使いながら検証してみたいと思います。
疑問点等ありましたら、コメントいただきたいと思います。

【政府が100万円の国債を発行して、民間銀行に売却し、そこで得た売却資金を元手に、
民間企業(自動車会社)から、
100万円の車を購入する。】

具体的なプロセスは次の4つとなります。
① 民間銀行が国債購入資金を日本銀行から借りる=日本銀行による【信用創造】で、民間銀行の日銀当座預金に
借り受ける。
② 政府が国債を発行し、民間銀行へ売却する。民間銀行は、国債購入代金を、政府に、①で借り受けた民間銀行の資産である
日銀にある日銀当座預金から、同じく日銀にある政府預金に振り込む。
③ 政府が民間企業から車を買う(財政出動)。政府は、政府預金から車を売却した民間企業の預金口座を持つ民間銀行の
日銀当座預金口座へ、車の代金を振り込む。
④ 民間銀行は、振り込まれた③の日銀当座預金から、日銀へ①で借り受けた借入金を返済する、と同時に民間企業の預金額を
増やす。 以上のプロセスを、表1により、追うことにしましょう。
表1の【機関名をクリック】欄の各機関名をクリックすると、
1 メッセージボックスに、前記①~④のプロセスごとに、その機関における仕分けの内容が表示されます。
OKボタンを押すと
2 表1の右側の【借方】、【貸方】欄に、1の内容に沿った仕分けが、次表の仕分けの原則にしたがった形で表示されます。

仕分けの原則

借方 貸方
資産 増(+) 減(ー)
負債 減(ー) 増(+)

また、ブラウザの【再読み込み】ボタンをクリックすれば、表示がクリアされますので、再度、試すことが出来ます。

表1 プロセス別の各機関別の仕分け内容


 プロセス

 機関名をクリック

 借方

 貸方
①民間銀行が国債購入資金を日本銀行から借りる=日本銀行による[信用創造]  民間銀行
 日本銀行
②政府が国債を発行し、民間銀行へ売却する。民間銀行の国債購入資金は、①で借りた日銀当座預金であるが、これが、政府預金へ振り替えられる。  民間銀行
 日本銀行
 政府
③政府が民間企業から、車を購入する[財政出動]。政府は、口座を日銀内にしか持っていないため民間企業への支払いは、日銀内の民間企業が取引する民間銀行の日銀当座預金経由となる。  政府
 日本銀行
 民間銀行
 民間企業
④国債を購入した民間銀行が借入金を日本銀行へ返済する。  民間銀行
 日本銀行

以上の仕分けは、プロセスごとに作りましたので、関係機関別に整理しないと、トータルとしての、結果がわかりません。
よく見ると、借方、貸方に同じ内容の科目がありますが、これは、お互いに相殺することが出来るので、結果は、相当単純な
形になります。
表1のプロセス別の各機関ごとの仕分け内容を、機関別・プロセス別に整理した仕分け内容を、表2に示します。
個々の仕分け内容は、表1と同じです。
プロセス欄をクリックすると、その機関の仕分け内容の説明がボックス表示され、OKボタンを押すと右欄に仕分け内容が
表示されます。
Total欄をクリックすると、左右の同じ項目が相殺されて、相殺されない残った科目だけのTotalが表示されます。
続けて、Total欄をクリックすると、左右の同じ内容の科目に取り消し線が表示されます。
さらに、Total欄をクリックすると取り消し線が、消去されます。Total欄は、取り消し線のトグルボタンにもなっています。
また、ブラウザの【再読み込み】ボタンをクリックすれば、クリアされるので、何度でも試すことが出来ます。

表2 機関別・プロセス別の仕分け内容


 機関名

 プロセス

 借方

貸方
民間銀行 ①民間銀行が国債購入資金を日本銀行から借りる
②政府が国債を発行し、民間銀行へ売却する。民間銀行は、日銀当座預金で支払う。
③政府が民間企業から車を買う。政府は政府預金で支払う
④民間銀行が借入金を日本銀行へ返済する
Total    
 日本銀行 ①民間銀行が国債購入資金を日本銀行から借りる
②政府が国債を発行し、民間銀行へ売却する。民間銀行は、日銀当座預金で支払う。
③政府が民間企業から車を買う。政府は政府預金で支払う
④民間銀行が借入金を日本銀行へ返済する
Total    
政府 ②政府が国債を発行し、民間銀行へ売却する。民間銀行は、日銀当座預金で支払う。
③政府が民間企業から車を買う。政府は政府預金で支払う
Total    
民間企業 ③政府が民間企業から車を買う。政府は政府預金で支払う
Total    

以上から、この国債発行による政府事業の実施という一連のプロセスを具体的な仕分けとして追跡してきましたが、
その結果わかった重要なポイントは、次の4点です。

1.民間銀行が、国債を購入する際に支払った資金は、政府事業完了後、民間銀行に還流して戻るので、枯渇することは
ないので、いつでも政府発行の国債を購入することができる。

2.前1により、仮に民間銀行が、日本銀行から国債を担保に購入資金を借入しても、政府事業が完了すれば、その借入金は
還流されてくるため、民間銀行は、日本銀行への借入金の返済で困るということはない。このため、借金しながら、永続的に
買い続けることも可能である。

3.民間銀行は、国債と普通預金を同時に獲得出来る。

4.民間企業には、普通預金という新たな資産が生まれる。

したがって、政府の国債発行による政府事業の実施は、民間の預金を増やすことになるので、
『孫子の代まで借金を背負わせる』という財務省の説明は、まったく逆でウソと言わざるを得ません。
財務省は。国債発行の幅を、大幅に拡大し、失われた40年のGDP挽回に即刻取り組まなければ、
日本の明日は、致命的なダメージを受けることになると思います。



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