5月 24, 2024
財務省が考える日本の未来地獄図を回避する
タイトルが、どぎついものになってしまったが、どうやら、これは、真実のようだ。
これは、陰謀論でも何でもなく、私が、財務省のホームページから考えられる未来図を描き出したところ、なんと、本稿のタイトルとなるのである。
1 日本の借金の状況
財務省の『これからの日本のための財政を考える』の中の、『6 日本の借金の状況』によれば、『日本の普通国債残高の推移・主な国の債務残高(対GDP比)』は、図1になる。
図1
以上の他、地方自治体の債務が200兆円ばかりあるので、日本全体では、約1200兆円の債務がある、と言われている。
2 債務の返済方法
財務省は、増え続ける債務の返済について、『国債の発行額が増え続けていくなか、償還は可能なのでしょうか』の中で、
『国債の償還については、60年償還ルールに基づき、償還しています。』
と説明している。
2.1 減債制度の仕組み
国債の償還については、財務省の『債務管理リポート2021 -国の債務管理と公的債務の現状-』の中の『3 債務管理制度』の『(1)減債制度』に書かれている。
『一般会計及び特別会計で発行される全ての国債の償還は、国債整理基金を通じて行われます。
我が国では、国債の償還を確実に行うため、一定のルールの下、各会計から国債整理基金特別会計に償還財源の繰入れを行う仕組みになっています。』
償還は、
- 一般会計からの繰り入れによる現金償還
- 借換債の発行
と大きく2つの方法があるが、これを図示したものが、図2-18だ。
2.2 60年償還ルール
60年償還ルールについては、財務省の『債務管理リポート2021 -国の債務管理と公的債務の現状-』の中の『3 債務管理制度』のp73に『A 償還方法 a 60 年償還ルール(建設国債及び特例国債)』として図2-19の説明がある。
詳細な説明は、リンク先をお読みいただくとして、この図2-19は、『ある年度に 600 億円の国債を全て 10 年固定利付国債で発行した』とした場合に、10年ごとに満期が来るので、10年ごとの償還方法が、描かれている。60年 ÷ 10年 = 6回 なので、600億円 ÷ 6回 = 100億円/回となり、10年ごとに、100億円の現金償還をする。その結果60年で合計600億円となる。
このため、60年で全額現金償還できる、というわけだ。
ここで、10年ごとに現金100億円償還、となっているが、これは、図2-18 に示すように一般会計から繰り入れるため、税金を投入することとなり、一般会計を圧迫する。
残りの500億円以下は、借換債発行による売却資金なので、一般会計を圧迫することはない。
なお、① 60年償還・一般会計からの定率繰入 については、以下の注釈が同p.73の右欄にある。
戦後の国債発行に際して、建設国債の見合資産(政府が公共事業などを通じて建設した建築物など)の平均的な効用発揮期間が概ね60年であることから、この期間内に現金償還を終了するという考え方で採用されたものです。また、この考え方から、毎年度の定率繰入の繰入率がほぼ60分の1に相当する100分の1.6とされています。
また、② 現金償還 については、以下の注釈がある。
この場合の現金償還とは、公債の償還に当たってその財源調達を借換債発行という手段によらないことをいいます。なお、国債の個々の保有者に対しては、満期時には、必ず現金で償還されます。
3 以上から未来地獄図が見えてくる
3.1 前提条件
- 現在の国の借金:1200兆円
- 60年後の日本を描く
3.2 毎年の現金償還額と借換債額
- 1年後の現金償還額:1200兆円 x 0.016 = 19.2兆円
- 1年後の借換債額:1200兆円 - 19.2兆円 = 1180.8兆円
- 2年後の現金償還額:1180.8兆円 x 0.016 = 18.89兆円
- 2年後の借換債額:1180.8兆円 ー 18.89兆円 = 1161.9兆円
- 3年後の現金償還額:1161.9兆円 x 0.016 = 18.59兆円
- 3年後の借換債額:1161.9兆円 ー 18.59兆円 = 1143.3兆円
- ・
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- 60年後 現金償還額の60年間の合計額:1200兆円
なお、この計算では、現金償還額は、必要債務残高に定率(0.016)を乗じて求めているため、現金償還額が年々逓減していく。このため、現金償還額の不足を生ずることになるが、同レポートでは、株式運用益などを活用して60年で完済するよう実施する、とある。
3.3 60年間で完済する、とは、現実にどういうことになるのか
60年間で現金償還を完済するとあるが、この現金は、すべて税金が使われるわけだ。
したがって、1200兆円の国債を60年で完済する、ということは、60年かけて、国民から1200兆円の税金を徴収して、完済する、ということになる。
1200兆円の国債の所有者は、今のところ、日本銀行と民間金融機関が、半々だ。個人は微々たるものなので、ここでは省略する。
以上から、国債を現金で完済する、とは、どういうことが起こるのか、組織別に見てみたい
1 民間
預金財産が、税金1200兆円分、減る。
2 政府
税金1200兆円分、日銀政府預金は増えるが、これを、日本銀行と民間銀行に現金償還するので、結局、政府預金はゼロになり、負債である国債もゼロになるだけ。
3 日本銀行
国債が現金償還されるので、資産である国債(約600兆円)がゼロになり、同時に資産である現金(約600兆円)が増える。つまり、国債が現金に変わるだけ。
4 民間銀行
国債が現金償還されるので、資産である国債(約600兆円)がゼロになり、同時に資産である現金(約600兆円)が増える。つまり、日本銀行と同じく、国債が現金に変わるだけ。
以上から言えることは、民間が、著しく疲弊して地獄を見る、とともに、日本銀行と民間銀行が、きわめて裕福となる、と言うことだ。
日本銀行は、政府の子会社であるため、日本銀行が裕福になる、ということは、政府が裕福になるということでもある。。
したがって、政府がこれを民間にばらまけば、良い、ということにもなるが、それなら、次項でも述べるが、諸外国のように、現金償還は一切しないで、借換債で、つなぐ、という方法が、最も賢明な方法であると考える。
なお、民間銀行の600兆円は、日銀当座預金なので、政府が国債を発行すれば、有利な国債にすぐに変えると思われるので、政府としての財政出動も容易になると考える。
しかし、いずれにしても、民間疲弊後であれば、何をしても、立ち直りは困難だと思われるので、やはり、民間疲弊を伴わない諸外国同様の国債・全額、借換債でつなぐ方法が良いと考える。
4 諸外国の債務管理制度
財務省資料『諸外国の債務管理政策等について』の中の『諸外国の債務管理(公債制度編)』を以下に再掲する。
この中で、『国債の償還』を見ると諸外国は、すべて以下のとおりとなっている。
① 償還ルール: 財政黒字になれば償還(明示的なルールなし)
② 借換財源: 国債発行により調達
5 結論
以上から、日本だけが、馬鹿正直というか、クソまじめな、というか、おかしな、しかも不必要な60年償還を実施していることがわかる。
なぜ、このような国民にとって、不毛な国富破壊の経済政策を取っているのか、その極めて重要な理由のひとつに、この政策が貴重なザイム官僚の天下り先を提供しているからだと思う。
それは、本レポートの中でも、何度も出てくる『国債整理基金特別会計』にぶらさがる天下り先確保が、ザイム官僚にとっては、最重要課題であるからだ。
この『国債整理基金特別会計』を残さなければならないため、、屁理屈を並べて、国民を煙に巻いている、だけだと思う。
したがって、この60年償還ルールは、きっぱりと破棄して、諸外国と同じように、国債の全額を借換債で継続していく、国富の破壊を行わない、政策に即刻切り替えるべきである。
日本国は、60年後になくなるものでも、滅亡するものでもなく、永遠に存続して発展させていく必要のある大切な国である、と考えるからである。
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