学術会議 核のゴミ 地中廃棄 『白紙に』

日本学術会議は、原子力委員会から依頼されていた

『高レベル放射性廃棄物の処分に関する取り組みについて(依頼)
         平成22年9月7日』

に対して、さる平成24年9月11日

回答 高レベル放射性廃棄物の処分について

として、6つの提言を回答した。

『本提言は、原子力発電をめぐる大局的政策についての合意形成に
十分に取り組まないまま高レベル放射性廃棄物の最終処分地の選定という
個別的課題について合意形成を求めるのは、手続きが逆転
しており、
手順として適切でない、という判断に立脚している。』

高レベル放射性廃棄物の増加・満杯問題

高レベル放射性廃棄物は増加を続けており、201112月末時点で、
青森県六ヶ所村と茨城県東海村にて、ガラス固化体合計1,780が保管されている。
さらに、 同時点で、海外に再処理を委託した結果発生したガラス固化体のうち、
未返還分が約872本分存在するほか、再処理をすれば約24,700本のガラス
固化体
が生み出される使用済み燃料が、各地の原子力発電所と青森県
六ヶ所村の再処理工場に
存在している。

また、 各発電所等の使用済み燃料プールの容量は、 単純計算をした場合、
それぞれの発電所をこれまで通り運転をすると約6年で満杯となる計算である。』

【提言1】 高レベル放射性廃棄物の処分に関する政策の抜本的見直し

『わが国のこれまでの高レベル放射性廃棄物処分に関する政策は、・・・
基本的な考え方と施策方針の見直しが不可欠である。 これまでの政策枠組みが、
各地で反対に遭い、 行き詰まっている
のは、 説明の仕方の不十分さというレベルの
要因に由来するのではなく、より根源的な次元の問題に由来していることをしっかりと
認識する必要
がある。 これらの問題に的確に対処するためには、 従来の政策枠組み
をいったん白紙に戻す覚悟で見直さなければならない。

【提言2】 科学・技術的能力の限界の認識と科学的自律性の確保

『地層処分をNUMOに委託して実行しようとしているわが国の政策枠組みが行き詰まりを
示している第一の理由は、 超長期にわたる安全性と危険性の問題に対処するに
当たり、現時点で入手可能な科学的知見には限界があること
である。

東日本大震災の経験は、 現時点での科学的知見と技術的能力の限界を冷静に
認識することを要請
している。 これに反して、 特定の専門的見解から演繹的に
導かれた単一の方針や政策のみを提示し、 これに対する理解を求めることは、
もはや国民に対する説得力を持つことができない。

参考資料】諸外国における高レベル放射性廃棄物処分をめぐる近年の動向

① アメリカ

・ 2002年に連邦議会の立地承認決議を法律とすることにより処分場サイトが
 ネバダ州のユッカマウンテンに決定したものの、 政権交代により誕生した現政権は
 ユッカマウンテン計画を中止する方針。

地層処分施設の開発を可及的速やかに進めることを勧告する。

② カナダ

・ 1989年にAECLによる環境影響評価書を評価するために政府により任命された
 専門家パネル (通称:シーボーンパネル) がAECLの地層処分概念は技術的には
 評価できるが、 広く社会的支持を得るには至っていない。 現在の形の処分概念は、
 カナダにおける放射性廃棄物管理のアプローチとして採用するに十分なレベルの
 社会受容性を備えていない。

・ そこでは、「適応的段階的管理」 (Adaptive Phased Management)と呼ばれる
 基本原則が採用され、 今後60年程度はHLWの発電所内貯蔵や中間貯蔵を
 行いながら地層処分の準備
を行い、さらに、地層処分後も、200年間は取り出し
 可能性を担保
するなどの内容が盛り込まれた。
 (注)HLW:High Level Waste (高レベル放射性廃棄物)

③ イギリス

・ 注目されるのは、 既に技術専門家の間では地層処分のみが取り得る技術
 選択肢であると解されていたにもかかわらず 今一度、 考えられる主要な技術
 選択肢(例:海洋底処分、宇宙処分等)の利害得失をオープンエンドで評価し、
 その上で地層処分を採るべき選択肢として勧告している点、そして、
 地層処分場が設置されるまではHLWを中間貯蔵すること、そしてこの中間貯蔵
 プログラムは、将来ありうる地層処分の遅延や困難に対応できるだけのもの
 あること を明示している点である。

④ フランス

・ 放射性廃棄物管理機関(ANDRA)が4つの地域での地質調査に着手したものの、
 地元の反対を受けて1990年に停止に至 った。

・ その反対運動の原因を議会科学技術選択評価委員会(OPECST)が調査した結果を
 踏まえて、1991年に放射性廃棄物管理研究法が制定され た。

・ この法律において、高レベル・長寿命放射性廃棄物の管理方策に関する3つの
 オプションを設定し、研究を実施することになった。
 すなわち、 長寿命の放射性核種の分離と短寿命の核種への変換を可能とする
 解決法、 地下研究所を利用した、 可逆性のあるまたは可逆性のない地層処分の
 実現可能性、そして長期中間貯蔵の方法、及び事前に必要となる廃棄物の
 前処理方法
である。

・ 同法はさらに、これらの研究活動の進捗を、政府が毎年、議会(国会)に報告する
 とともに、15年以内に研究全体を総括した評価結果を提示することも義務づけた。

⑤ スウェーデン

・ スウェーデンでは1980年に原子力発電の是非を巡って国民投票が実施され、
 その結果を受けて原子力発電から段階的に撤退する政策がとられてきた。

・ 使用済み核燃料は、各発電所で冷却(炉取り出し後約1年間)した後、
 「集中中間貯蔵施設」に輸送し、地下30メートルに設けられたプールで貯蔵されており、
 2010年末における貯蔵量は5,222トン、全ての原子炉の運転が停止するまでに発生
 する使用済燃料の累積量は約11,600トンになる見込み。

・ このように、同国においては、発生する高レベル放射性廃棄物の総量が定まった
 上で、 高レベル放射性廃棄物の処分 (同国の場合は使用済み核燃料の直接処分)
 の実施機関として、「スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)」 が電力会社の
 共同出資によって1984年に設立され、 高レベル放射性廃棄物の処分事業だけで
 なく 、その他の放射性廃棄物の処分事業、高レベル放射性廃棄物の中間貯蔵
 事業等も行ってきた。

・ SKB社は、1992年に取りまとめた研究開発計画において、サイト選定に関し、
 総合立地調査、フィージビリティ調査、サイト調査、詳細特性調査という4種類の調査を
 設定し、 2段階で選定が進められる構成」を取り、立地点の選定を進めてきた。

・ この立地点選定のプロセスにおいて、 住民投票で調査への同意が得られな
 かった自治体からはSKB社は撤退し、同意の得られた自治体で調査を進め、
 絞り込みを進めた結果、
2009年6月にSKB社は、処分場の建設予定地として、
 エストハンマル自治体のフォルスマルクを選定した。

・  2011年3月にSKB社が、エストハンマル自治体のフォルスマルクを処分場の
 建設予定地とする立地・建設の許可申請書を提出し、SKB社の計画では、
 処分場の操業開始は2025年頃となる見通しである。

⑥ ドイツ

・  ドイツでは、 使用済燃料を再処理し、 回収したプルトニウムなどを燃料として
 再び利用することを原則としていたが、2002年の原子力法改正により、2005年7月
 以降は再処理を目的とした使用済燃料の輸送を禁止
した。

・ 現在は、使用済み燃料は再処理せずに直接処分する方針。

・ 2000年には連邦政府と主要電力会社は、 原子力発電からの段階的撤退等に
 関して合意
2002年には原子力法を全面改正し、この合意内容の一部が法制化
 され、商業用原子力発電所の運転期間を原則32年間に制限するとともに、
 今後の原子力発電の総量に上限を設けた。

・ 2009年秋に成立した現連立政権は、脱原子力政策を維持しつつも、2010年9月に、
 運転中の原子炉17基の運転期限を平均で12年延長
することを含む、将来のエネル
 ギー政策を閣議決定し、翌2010年10月には、これに対応する原子力法改正案が、
 連邦議会で可決していた。

・ しかし、東京電力(株)福島第一原子力発電所の事故を受けて連邦政府は、
 2011年3月に、17基の原子炉のうち8基(1980年以前に運転開始した炉) を停止
 
させるとともに、予定していた原子炉の運転期限の延長を凍結した。

・ さらに2011年6月、連邦政府は、停止させた原子炉8基を即時廃止し、2022年まで
 に全ての原子炉を閉鎖
することを含めた、将来のエネルギー政策の見直しを閣議
 決定した。

・ こうした経緯から、 ドイツにおいては高レベル放射性廃棄物として処分されるべき
 ガラス固化体と使用済み燃料の総量の目途が確定
している。

・ 1970年代の当時の西ドイツでは、ドイツ北部の岩塩ドームが最も適していると考えら
 れていたため、 連邦政府と、 岩塩ドームが多く分布するニーダーザクセン州が中心と
 なってサイト選定を進めた。

・ 1976年にはニーダーザクセン州政府の任命したプロジェク トチームが、総数140の
 岩塩ドームから4段階での選定作業を開始し、安全・環境面、地域への影響、経済的
 影響等に対する考慮などから4カ所に絞り、最終的には旧東西ドイツ国境近くの
 ゴアレーベンを候補サイトとして選定した。

・ 反対の動きもあったものの、最終的には1979年9月に連邦と全ての州の首相が
 集まってバックエンド決議を行い、 ゴアレーベンの調査を行い、 処分場に適している
 ことがわかった場合には、 同地において処分場を建設することを決定していた。

・ 2011年6月に打ち出された連邦政府の最新の方針では、再開される ゴアレーベン
 での探査活動と並行
して、 代替の処分オプションを選定するための手続きを検討
 することが含まれたため、BMU(連邦環境・自然保護・原子炉安全省) と16の州政府が
 会合を持ち、2011年11月にゴアレーベンの代替処分サイ トを選定する手続きに
 関する法案を策定することで合意
した。

東京新聞(2012/9/12)

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