簿記がわかれば政府の財政がわかる

お金やものの出入りなどの取引を記録するものが簿記である。

どんな取引にも、2つの側面(原因と結果)があり、この両面を表さなければ、正確な簿記とは言えない。1つの取引を2つの側面から記録する方法が、『複式簿記』である。

1回の取引を左右2つの項目に振り分けて、それぞれに科目と金額を記入する。

左側を、『借方』、右側を、『貸方』と言うが、この『借方』と『貸方』の金額は、必ず一致する。

取引を構成する科目には多くの種類があるが、それらを大分類すると、次の5大要素(資産・負債・純資産・収益・費用)のどれかに分類される。

   〇 資産・負債・純資産---貸借対照表
   〇 収益・費用-------損益計算書

取引は、この5大要素のうちの2つの要素の科目を左右に振り分け、その増減によって表現することが出来る。

5大要素別の左右振り分けのルールを『仕訳のルール』と言うが、これを表1に示す。

表1 仕訳のルール

 5大要素  借方 貸方 
 資産  発生または増加 ↑ 消滅または減少 ↓
 負債 消滅または減少 ↓ 発生または増加 ↑
 純資産  消滅または減少 ↓ 発生または増加 ↑
 収益  –  発生または増加 ↑
 費用  発生または増加 ↑

政府の財政を考える際の関係組織は、次の4つ。

   〇 政府
   〇 日本銀行
   〇 民間銀行
   〇 民間企業

次に関係組織別に資産・負債・収益の要素別に出てくる科目を表2に示す。
下表の見方であるが、例えば、日銀当座預金は、民間銀行から見れば資産であるが、日本銀行から見れば、負債となる。
また、民間預金は、民間企業から見れば、資産だが、民間銀行から見れば負債となる。

表2 政府の財政を考える際に出てくる取引項目(科目)と資産・負債・収益の関係

   政府  日本銀行  民間銀行  民間企業
 預金    日銀政府預金  資産  負債  –  –
 日銀当座預金  –  負債  資産  –
民間 預金  –  –  負債 資産
国債   負債   資産  資産 資産 
固定資産(道路など)   資産  –  – 
売上(利益を含む)  –  –  –  収益 

前回説明した、政府による道路建設の財政出動の仕訳(簡易貸借対照表B/S)は、途中の経過を省略していたので、わかりにくかったと思うので、表3に国債発行から、道路建設完了後の民間企業への工事代金の支払いまでのプロセスを示し、表4に、プロセスごとの、関係組織の仕訳について説明する。

表3 取引のプロセス

  1 政府による国債の発行
 ①  政府が国債を発行
 ②  民間銀行Aが国債を購入
 ③  日本銀行は、民間銀行Aの日銀当座預金Aから、日銀政府預金へ国債購入代金を振り替える
 2 政府による道路建設
 ④  政府が、道路建設を民間企業へ発注し、完成後、民間企業へ日銀政府預金から工事代金を支払う
 ⑤  日本銀行は、日銀政府預金から民間企業使用の民間銀行Bの日銀当座預金Bへ道路建設代金を振り替える
 ⑥  民間銀行Bは、民間企業の預金口座に道路建設代金を振り込む 

次に、関係組織別に、プロセスごとの仕訳(簡易貸借対照表B/S)を、表4に示す。

表4 関係組織別プロセスごとの仕訳

 関係組織 プロセス  借方   貸方
政府    ① 日銀政府預金 100  国債  100 
 ④ 道路   100  日銀政府預金 100 
計   道路   100 国債  100 
  日本銀行 ③  日銀当座預金A 100  日銀政府預金 100 
⑤  日銀政府預金 100  日銀当座預金B 100 
計※ 
 民間銀行A(国債購入)  ② 国債  100   日銀当座預金A 100
民間銀行B(民間企業預金口座)  ⑥  日銀当座預金B 100  民間預金 100 
民間企業  民間預金 100   売上 100

 

※:日銀当座預金A、Bは、日銀当座預金額としては、日本銀行から見ればプラスマイナス0なので、計としては、0となる。

表4において、借方と貸方で同じ科目で同じ金額がある場合には、相殺してゼロ(0)になる。

表4から次のことが言える。

政府が国債を発行して、政府事業を実施した場合には、2つの経済効果が生ずる。

   ① 政府は、成果物(今回の場合は道路)を得ることができる。
   ② 民間企業に、新たな民間預金を生むことができる。

したがって、能登半島大地震の復興をはじめ、賃金の半分以上を占める社会保険料の廃止や消費税の廃止など我が国を貧困化してきたプライマリーバランスゼロ化という、天下の愚策を一刻も早く撤廃して、

日銀当座預金500兆円の国債発行による財源化を実現して、日本経済の復興をはかることが緊急の最重要課題

であると考える。

また、国債の累積発行高は、これらの富を生んだ過去の履歴であり、国債の償還問題は、日本国が存在する限り、借換国債の発行でクリアされているため、何ら心配することはない。

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