これは、日銀が、過去の1年8カ月の間に、110兆円もの国債買取による「量的・質的金融緩和」を実施した結果の検証だが、これを見ると何てことはない。景気回復もしなかったし、インフレにもならなかった。
この結論部分で、
おわりに
以上留意点はあるものの、各種の金融経済指標は、「量的・質的金融緩和」で想定されたメカニズムに沿った形で、変化してきたことが確認できた。なお、当分析の対象期間(2013年1~3月期から2014年10~12月期)の後、CPI上昇率は低下してきており、最近では前年比ゼロ%程度で推移している。これは、主として昨年度後半以降の原油価格下落の影響を反映した動きであり、これまで示した「量的・質的金融緩和」の効果の基本的な波及メカニズムは引き続き働いているものと考えられる。もっとも、2%の「物価安定の目標」を安定的に実現するためには、さらなる予想物価上昇率の上昇が必要である。この点では、原油価格の急落による現実の物価上昇率の低下が予想物価上昇率の形成(図表1の①および⑥)、とりわけ適合的な期待形成(同⑥)との関係でどのような影響を与えるか、注視していく必要がある。
と書かれている。
これは、簡単に言えば、ほとんど経済に影響がなかった、ということであり、実際にも何ら効果もなかった、ということだ。
110兆円もの大金を、国債買取により、単に銀行に発行しただけだったので、金がダブついて、金融市場にあふれた結果、一時的には株価の上昇に結び付いたが、いまや、泡沫と化して、元も子もない状態だ。いや、国債が枯渇して、国債までもが、マイナス金利状態になっている始末だ。
もしこの大金を、東日本大震災で被災した、すべての住民のための住宅建設のために、全額振り向けていたとしたら、どういうことになっていたか。すべての被災住民の生活は、もとどおりとまではいかないまでも、今よりは、はるかに楽な生活を得ることができていただろう、といえるし、さらに、GDPも、110兆円プラスとなり、いまごろは、600兆円を超えて、国民全体も裕福な暮らしを得ることができていただろう。
すべての元凶は、財務省の≪プライマリーバランス≫という教条主義にある。この財務省の誤った考えを正さない限り、わが国の明日は暗い。
熊本地震の復興には、全額政府支出による復興が可能だし、国民経済的にも、それが正解なのだ。東日本を含めて、50兆円程度のカネの新規国債発行による調達は、この≪日銀レビュー≫から見ても、何ら問題はない。≪プライマリバランス≫論の財務省は、九州出身の麻生財務大臣に抑え込んでもらえばいいだけの話だ。
本件については、財務省『日本の財政を考える』の検証 もお読みいただければ幸いです。