12月 8, 2024
世界の中の日本と今後の対策

目次
1 はじめに
2 世界の中の日本
3 対策
1 【異次元の金融緩和政策】により作られた膨大な資産の活用
2 対策

 1 はじめに

前回の記事から、わが国財務省の経済政策は、戦後、現在にいたるまで、一貫して、誤っていたことが、判明しましたが、その結果、現在の日本は、世界の中でどのような位置にいるのか、まず明らかにしてみたいと思います。

次に、では、これから何をどうすれば良いのか、という新たな施策を考えて見ます。その際、われわれの先達は、何か良いものを残していってくれたものがあるのか、良く調べて、利用可能なものがあれば極力活用していく、というスタンスが大切です。

2 世界の中の日本

財務省の誤った長年の政策により、日本は、世界の中で、どこまで転落してしまったのか?

これを正確に把握する指標は、やはり、国内総生産(GDP)の国際比較です。

表1に各種GDPの日本の世界におけるランキングを示しました。

2000年には、GDPは、1人当たりGDPも含めて、世界第2位をつけた日本でしたが、その後、下降線をたどり、最近では、4位。

1人当りGDPでは、第34位と大きく転落しました。

さらに、実質GDP成長率で見ると、日本の昔からの悪しき実態が明らかになるのですが、GDP第2位をつけた2000年ですら、世界第129位/180か国、さらに現在では、より大きく転落し、第182位/213か国と、下層グループ内を、底辺目指して、まっしぐら、といった危機的状態です。

表1 世界の中の日本のGDP

項目
ランキング(位)
2000 2022 2023
名目GDP(IMF) 2 3 4/193か国
1人当り名目GDP(IMF) 2 34 34/193か国
実質GDP 3/213か国
実質GDP成長率 (IMF) 131/193か国
    〃   (国連) 182 182/213か国

3 対策

次に、瀕死の重傷状態の日本に対する処方箋を考えましょう。

財務省は、『財源がない。やはり消費税などの増税はやむをえない』と、憔悴しきった日本、特に日本国民に対して、さらに追い打ちをかけるような厳しい要求を突きつけようとしています。しかし、ほんとうに打つ手はないのでしょうか。

よく調べてみると、皆さんご存じの前日銀総裁・黒田東彦氏が実施した【異次元の金融緩和】政策により作られた膨大な資産があるのです。

しかし、財務省は、あえて、これには触れません。

【異次元の金融緩和】とは、日本銀行が、大量の民間銀行の国債を買うことであり、その購入代金として、日本銀行が大量の新規通貨を発行(信用創造)して、この新規通貨を、日本銀行内にある民間銀行の資産である日本銀行当座預金口座(以下、日銀当座預金という)に供給することです。この【異次元の金融緩和】の結果、日銀当座預金には、膨大な新規通貨が蓄積されたのです。

【異次元の金融緩和】政策は黒田さんが、日銀総裁に就任された2013年から、退任された2023年までの、実に10年間にわたり実施されました。

その結果、2012年末には、47兆円と、マネタリーベースの中でもわずかな存在でしかなかった日銀当座預金残高は、2023年度末には、545兆円と飛躍的に増加しました。

黒田さんが就任された2013年から2023年までの間の日銀当座預金の増加ぶりが、いかに【異次元】であったかを見ていただくために、1998年から2023年までの推移をグラフにしてみました(図1)。これで見ると、2013年からの異常な増加ぶりがよくわかります。

図1 マネタリーベース・うち日銀当座預金年度別推移(日銀時系列統計データ検索サイト)

この【異次元の金融緩和】で作られた新規通貨は、日本経済再生のための資金であり、いわば、国民のための新規通貨なのです。これを国民生活に役立たせることが、政府・財務省の責務なのです。

しかし、現実には、この【異次元の金融緩和】は、日本経済の再生・復活には、役に立ちませんでした。

それは、きわめて単純な理由からでした。

この【異次元の金融緩和】政策を生かすためには、この金融政策で生み出された膨大な新規通貨、すなわち日銀当座預金に積まれた膨大な資金を日本経済へ、すなわちマネーストック・市場へ供給することが不可欠だったのですが、この日本経済へ供給するための【財政政策】が、財務省のサボタージュにより、実施されなかったため、日本経済の再生・復活には、何の役にも立たなかったのです。

景気対策の基本は、①金融政策 と ②財政政策 の2つであり、これが、金融財政学の基本です。
この2つは、車の両輪であり、この2つがそろわないと、景気対策にはならない、というわけです。

金融財政を調べてみると、「金融」とは通貨供給量、すなわち支出に回せる貨幣量を指す。 一方「財政」とは予算、すなわちお金をどう使うかを示す。とあります。

①の金融政策は、黒田さんにより、毎年、十分な新規通貨量が信用創造で生み出され、準備完了となっていました。

②の財政政策は、政府・財務省の仕事です。財政政策とは、①の金融政策により準備された大量の新規通貨(マネタリーベース)を、日本経済へ、マネーストック・一般国民市場へと供給することであり、これを【財政出動】と言いますが、この【財政出動】が財務省のサボタージュにより、実施されなかったため、日本経済・市場に新規通貨が供給されることなく、このため景気浮揚につながらずに、結局、【異次元の金融緩和】政策が、不発に終わったのです。

いわば、新しい血液は、大量に準備されていたのですが、これが体内に輸血されなかったため、血液不足で死んでしまった、というごく初歩的なミスであった、ということです。

弱体化した経済も、人間と同じく、新規通貨という血液を輸血しなければ、助からない、ということなのです。

黒田東彦さんのWikipediaの記事のなかで、当時の日銀副総裁・岩田規久男さんの次の訴えが、ありましたが、このことを端的に語っています。

岩田規久男・前日銀副総裁は「日銀だけが一生懸命やっているが、財政は逆噴射しているのが実情であり、今は日銀の金融超緩和政策と積極財政の協調が不可欠」とし、このまま消費増税を実施すれば「黒田東彦日銀総裁は、10年かけても物価2%が達成できなかった駄目な総裁で終わってしまう」と述べ、デフレ脱却には10%の消費税率引き上げを撤回するとともに、国債発行を財源として若い世代に所得分配する財政拡大が不可欠と訴えた。

岩田さんは、財務省の出身でもなかったためか、この正論たる訴えを、財務省は、もちろん、新聞・テレビなど主要メディアも無視したため、日本の夜明けは、さらに遠のいたのです。

1 【異次元の金融緩和政策】により作られた膨大な資産の活用

【異次元の金融緩和政策】とは、すでに述べたように、黒田さんが、日銀総裁に就任された2013年から2023年までの10年間にわたって、実施された政策で、民間銀行の国債を買いまくった政策です。

前回の記事から、明らかになったように日本銀行が【民間銀行の国債を買うということは、日本銀行が、国債の購入代金として【新規通貨を信用創造して民間銀行の日銀当座預金に供給する】ということです。

図1に見られる通り、2012年には、わずか47兆円だった日銀当座預金が、2023年には、実に545兆円と10倍になっています年平均50兆円増加のペースです。

黒田さんは、毎年50兆円程度の新規通貨をマネタリーベースから、日本経済のマネーストック、つまり市場へ流し込むことにより、日本経済の再生・復活と国民生活の向上を意図していたのだ、と思います。

しかし、残念ながら、財務省の緊縮財政政策により、日本銀行の信用創造で発行した新規通貨、年平均50兆円という莫大な日銀当座預金は、日本経済に供給されることなく、いまだにマネタリーベース内の日銀当座預金口座(民間銀行の資産)内に、このグラフに示す通り、ブタ積みされたまま、残されています。

黒田さんの【異次元の金融緩和政策】の構想は、およそ次のようなものであったあろうと推測されます。

年平均50兆円の新規通貨を日本経済に供給すれば、日本経済は間違いなく復活し、国民生活の向上に役立ち、インフレ率も適度に2%程度にまで上がって安定する。

この黒田さんの考えは、現在の日本経済にとっても最適であると考えます。
したがって、私の対策は、黒田さんの残してくれた莫大な資産を活用すること!です。

2 対策

日銀当座預金の準備預金額としての適切な金額は、過去のデータから、2012年度末の額、47兆円とします。

10年間の日銀当座預金額の増額は、約500兆円なので、年平均50兆円増となります。

したがって、対策としては、年平均50兆円の国債を発行・財政出動により、膨大な日銀当座預金を日本経済に還流させて、日本経済を再生・復活させることです。

対策の具体的な内容は次の通りですが、その基本は、国民生活の向上を目指すことにあります。

【毎年、一般会計の中に、特別予算として50兆円国債発行・財政出動により、次の施策を展開する】

  1. インフラ整備(道路・河川・海岸・水道・電気・通信等)
  2. 農・山・漁業、製造業等支援
  3. 消費税廃止、ガソリン税廃止、社会保険料公費負担等
  4. 低額年金者支援
  5. 健康保険税等公費負担
  6. 高齢者福祉充実(特養大幅増設等)
  7. 国民給付等

【補足】

民間銀行が、国債を購入する資金が、枯渇するのではないかとの心配があると思いますが、これについては、前回の記事の結論に書かれた表7 財務省のプロパガンダを簿記で追跡した結果を見ていただくと、民間銀行の当座預金が、国債購入により減(―)になりますが、その後、政府の国民給付事業の実施により、民間銀行の日銀当座預金は、増(+)となります。

結局、国債を購入して減った日銀当座預金は、その後、政府が政府事業が完了して、政府が支出をした瞬間に、再び、民間銀行の日銀当座預金が増えることになります。したがって、民間銀行が、次に国債を購入する際に、購入資金で困る、ということは、未来永劫、起こらないので、心配はいらないのです。

LINEで送る
Pocket

More Details

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です