1 はじめに
現在の政府の負債は、国債等(以下国債と言う)全部で1200兆円あると言われる。
国債1200兆円の所有者別内訳を概算で見ると、
日本銀行:600兆円
民間銀行:600兆円
となっている。
国債は、満期になれば、元本+利子を所有者に戻さなければならない(これを償還と言う)が、その方法には、財務省の『諸外国の債務管理政策等について』によれば、主に次の2つがある。
-
- 国債全額をすべて税金で償還する(先進国中、日本のみ)
- 国債全体をすべて借換国債(以下借換債と言う)で償還する(他先進国)
日本は、税金で償還しているが、全額税金で償還するには、あまりにも国民の税負担が重すぎることになるため、それを緩和するために、『60年ルール』という姑息な手段で償還している。
しかし、この『60年ルール』も、60年後には、すべて税金で償還する方法とほぼ同等になる。
したがって、今回は、前述の2つの方法、すなわち、税金で償還した場合と、借換債による償還をした場合のそれぞれについて、どうなるのか、簡易B/Sを作成して明らかにするとともに、問題点を洗い出した。
2 国債全額をすべて税金で償還する場合
プロセスは、次の3段階となる
-
- ① 現状:政府による徴税権の設定
- ② 政府による徴税の実施
- ③ 政府による国債全額償還
このプロセスに沿って簡易B/Sを作ると表1のようになる。
表1 国債全額をすべて税金で償還する場合
プロセス | 組織 | 借方 | 貸方 |
---|---|---|---|
① 現状 | 政府 | ||
日本銀行 | - | ||
民間銀行 | |||
国民 | |||
② 徴税実施 | 政府 | ||
国民 | |||
民間銀行 | 日銀当座預金 1200 | ||
③ 国債全額償還 | 政府 | ||
民間銀行 | 日銀当座預金 600 | ||
日本銀行 | 現金 600 | ||
まとめ:組織別に借方・貸方相殺、計算 | 政府 | - | - |
日本銀行 | 現金 600 | - | |
民間銀行 | - | 日銀当座預金 600 | |
国民 | - | - |
【結論】
- 国民は、政府から徴税債務をかけられることによって、国民の資産である預金1200兆円が丸ごと・根こそぎ税金として徴収され、一切なくなる。現在実施されている税金による償還法は、日本国民を超貧困化する最悪な償還方法である。
- 民間銀行の資産である日銀当座預金が600兆円削減される。
- 日本銀行には、600兆円の現金が戻るが、これは、現状の国債600兆円が、現金に変わっただけで、資産的には現状と変化なし。
3 国債全額をすべて借換債で償還する場合
プロセスは、次の3段階となる
-
- ① 現状の設定
- ② 政府による借換債の発行・売却
- ③ 政府による国債全額償還
このプロセスに沿って簡易B/Sを作ると表2のようになる。
表2 国債全額をすべて借換債で償還する場合
プロセス | 組織 | 借方 | 貸方 |
---|---|---|---|
① 現状 | 政府 | - | |
日本銀行 | - | ||
民間銀行 | - | ||
② 借換債の発行・売却 | 政府 | 借換債 1200 | |
民間銀行 | 借換債 1200 | 日銀当座預金 1200 | |
③ 国債全額償還 | 政府 | ||
民間銀行 | 日銀当座預金 600 | ||
日本銀行 | 現金 600 | ||
まとめ:組織別に借方・貸方相殺、計算 | 政府 | - | 借換債 1200 |
日本銀行 | 現金 600 | - | |
民間銀行 | 借換債 1200 | 日銀当座預金 600 |
【結論】
- 国民の資産である預金には、一切手付かずのため、保全される。
- 政府は借換債1200兆円を発行するが、政府は永遠の存在であるため、借換債でつなぐことに何の問題もない。
- 民間銀行の資産として国債600兆円が、借換債1200兆円に増えるが、日銀当座預金が600兆円削減されるので、資産としては、600兆円となり、現状と変動なし。
- 日本銀行には、600兆円の現金が戻るが、これは、現状の国債600兆円が、現金に変わっただけで、資産的には現状と変化なし。
4 結論
日本だけが採用している『60年ルール』について説明する。
これは、簡単に言えば、60年で、1200兆円全額を償還する方法で、毎年、1/60=1.6%の国債を税金で償還する方法である。すなわち毎年
1200 × 1.6% = 19.2兆円
という膨大な無駄金を税金から『国債整理基金特別会計』に供出して、財務官僚天下り先の高額報酬・退職金を潤わせているだけなのである。
『60年ルール』は、日本をますます貧困化する悪策である。
直ちに、全額借換債による償還に変更し、必要なところへの予算配分をするべきであると考える。