『財政の健全化』より『国民生活の健全化』を

 財務省の『財政の健全化』を見ると、次のような家計金融純資産と一般政府総債務の接近グラフがありますが、そこに

財政健全化のために、我が国に残された時間は多くありません。現在、日本国債の93%は、潤沢な個人金融資産に支えられ、国内投資家が保有していますが、債務残高の増大と貯蓄水準の停滞により、この環境が変化する可能性があります。

と、暗に、政府の負債が、家計の純資産を上回ったら、大変なことになる・・・という不安を煽っています。

 しかし、実は、何も大変なことは起こらない、というよりも、より豊かになって、家計の純資産が、また上回っていくのです。
国民生活にとっては、プラスなのです。

家計ー政府債務推移

 では、実際に上回ったらどうなるのか、日銀の資金循環統計から、最近の数字を用いてシミュレーションして見ましょう。
資金循環統計によれば、2014年末の政府総債務は、1206兆円、家計純資産は1324兆円でその差額は118兆円です。

 したがって、政府の総債務(国債などの発行額)が、家計の純資産を上回るようにするため、2015年に差額を上回る120兆円の負債を増やしたら2015年末にどうなるのか?日本国のBSで見ることにしましょう。

 120兆円の国債などを発行したので、政府の負債は120兆円増加しますが、同時に、政府の手元には120兆円の現金が準備されるわけです。この120兆円を予算として執行するわけですから、120兆円は、2015年末には政府以外の複数の機関に支出され、その結果、それぞれの機関の資産に計上されているはずです。
仮に金融機関、非金融法人企業、家計に1/3づつ、つまり、40兆円づつ支出されたとしたら、日本国のBSは次のようになります。

① 政府の負債は、120兆円増加
② 金融機関、非金融法人企業、家計の資産がそれぞれ40兆円づつ増加
③ したがって家計の純資産は、1324+40=1364兆円となり、やはり、政府総債務の1326兆円を上回る結果となる。
④ 以上、日本国の資産総額は120兆円増加し、7123兆円となり、豊かになる。

 結局、日本国は、政府の負債増加分の120兆円分豊かになり、GDPも大きく成長するので、負債を増やして財政出動する政策は、日本経済をデフレから脱却させる正しい道なのですが、財務省は、この道を過去30年間にわたり、閉ざし、日本経済を疲弊させ続けてきたわけで、その責任はきわめて大きいと言わざるをえません。

『財政の健全化』から、『国民生活の健全化』へと至急舵をきらなければならないと思います。

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