混迷時代の橋下氏は、本物か?

 東京新聞(2012/9/7)が、『若者の橋下人気は本物か?』との記事を掲載した。

 続いて、2012/9/8 『「青い鳥」求める国民』と題して、

      『民・自イヤ → 「救世主」幻想
         大胆変化 とびつきがち』
  として、これからの選挙にあたっての警告記事を掲載した。

以下、これらの記事を要約し、その後私の考えを述べたい。

Ⅰの要旨:
① いまや、政界は、橋下大阪市長を中心に回るかのようだ。
② 世論調査では、次期衆院選の比例投票先では、自民党に次ぐ2位に。
③ そこで、本物か、どうか、都内で20代の若者に聞いた。
④ その結果は、以下の表のとおりだった。

 
橋下氏を支持するか?
比率(%)
支持する
5
33
支持しない
1
7
どちらでもない
9
60
15
100

⑤ 『支持する』の意見は、ネームバリュー、起爆剤、改革者として期待、政治の
   仕組みを変える姿勢が期待できる、など、具体的な政策より、仕組みや組織
   改革 ムード、勢いなどを評価する声が多かった。
⑥ 『支持しない』は、雑な感じ、1件だった。
⑦ 『どちらでもない』は、全部を無理してやろうとしても実現性がない、詳しくわか
   らない、実体が見えておらず、具体策がない、現状を見て政策を考えるべき、
   など、具体的政策がわからないため、決めかねている意見が多かった。
⑧ 大阪維新の会の次期公約『維新八策』は、戦後に形作られた仕組みの
   「リセット」を掲げる。
○ 現行480の衆院定数の半減
○ 首相公選制の導入
○ 憲法9条改正の是非を問う国民投票実施
○ 国民一人ひとりの「自立」や「責任」を強調する政策・・・生活保護の抑制
○ 教育委員会を廃止し、首長に権限と責任を集中
○ 農業などが壊滅的影響を受けかねない環太平洋連携協定(TPP)への
   参加など
⑨ 将来に不安をかかえる若者たちが、橋下氏に期待感を持つ理由として、
   精神科医の香山氏は、
   『今の時代の閉塞感を打ち破ってくれることを期待。その先に何が待ち構えて
    いるかを考える余裕が、目の前の就活や仕事で精一杯で、広い視野で社会の
    動きを見る余裕がない』
   と指摘。
⑩ 作家の雨宮氏は、
   『一点突破で状況を変えてくれそうな政治家として期待』
   『公務員や労組などの「敵」をつくり、「ガスぬきをして気持ちをすっきりさせて
    くれる」』
⑪ 立教大逢坂氏は、
   『メディアでは、橋下氏は、若い改革者のイメージを作り上げているが、
    その影響を受けている』
   『しかし、脱原発デモにも大勢の若者が参加するなど、政治への関心を芽生
    えさせる傾向も出てきている。今後は、主体的な動きをする若者も出てくるだろう』

Ⅱの要旨:
ここでは、国民全般を分析している。
① 『青い鳥症候群』:政治の混迷が続く中、国民は、問題を一気に解決してくれる
   「救世主」の登場を期待する。そんな救世主は存在しないのだが。
② 9/2の共同通信の世論調査:
    ☆支持政党は?
      ・ 支持政党なし: 47%
      ・ 自民党支持 : 19%
      ・ 民主党    : < 19%
    ☆次の総選挙の比例代表ではどこに投票するか?
      ・ 1位:自民党
      ・ 2位:大阪維新の会 17%
      ・ 3位:民主党 <17%
③ 龍谷大学の石田教授は、
  『日本では、20年間生活が向上していない。国民は経済的に苦しく、絶望感の中で
   受け皿を探している。シンプルな文句にすがりたがっている。』
④ 東京大学の安富教授は、
  『維新の会には、民主党以上に国を運営する能力はない。国民が新しい選択肢に
   飛びついても状況はよりひどくなる。カリスマ的キャラクターにひかれやすくなる。
   しかし、それでは、解決にならない。第一次世界大戦後、独裁者ヒトラーの台頭を
   許したドイツ同様、こうした状況打破の願望は極端なナショナリズムにもつながり
   やすくなる。』
   では、どうすればいいのか、については、
   『政治家の中には、まともな人もいるので、判断力と人格を兼ね備えた人物を
   選んでいく必要がある。新しいといって安易に飛びつくと危険。』

以上、要約したが、ひとことで言えば、

① 橋下氏の『維新八策』は、仕組み・組織の改造、早い話が、看板の付け替え
  だけで肝心の政策が皆無だ。
② その他の自民・民主も政策不在でたよりにならない。
③ よって、『支持政党なし』が、50%近くとなる。
④ 政治家の選び方は、『判断力と人格を兼ね備えた人をよく見極めて選ぶこと』

ということになる。

ここで、私なりに、総括させていただくと、③までは、そのとおり。
④は、具体的に、判断力と人格をどう見極めるか、実際問題としては、
むずかしい問題となる。やはり、政策で判断すべきではないかと考える。

ここで、わかりやすい米国大統領選をご覧ください

オバマ大統領の軸足は、富裕層ではなく、中間層だ、と明言している。
富裕層から増税して、中間層を減税する、そのカネで医療保険制度を
実現
するなど、富裕層の代弁者たる共和党を相手に奮闘している。
共和党は、オバマ大統領を『社会主義者』呼ばわりし、昔はやった
『アカ狩り』でなんとかつぶそうとするが、オバマは、そんなことで
へこたれる男ではない。

ところが、わが日本のリーダー達の軸足は、どこにあるのか、
いま、見てきたとおり、さっぱりわからん、というのが日本の実態だ。

野田は、社会保障充実のために、富裕層増税は、すずめの涙でごまかし、
大半を自民・公明の軍門に下る消費税増税を強行し、民主党公約を
破った。

橋下は、上に見たように、生活保護抑制など、野田以上に、社会保障の切捨てを
断行する危険人物
だ。

そこで、総括だが、いずれリーダーも日本の窮状を解決する力も方策もない、と
断言できる。

ここは、オバマ氏のような底辺・中間層に軸足を置いた斬新なリーダーの出現を
期待したいところだが、それが急には実現しないとすれば、現行社民党・共産党の
大幅な柔軟化を前提とした
国民目線の政策での共闘を組む以外に道はない、
と考えるが、いかがだろうか。

東京新聞(2012/9/7)


東京新聞(2012/9/8)

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